aaa and bbb

ここはA9のマス。ここはエクセル。私はエクセルにこの文章を書いている。勤務中に少しの息抜き。ここはA10のマス。白いマスに白い文字で書けば誰にも見つかりはしない。ヘマをしなければ私は私以外の誰にも見つかりはしない。

たぷたぷとタイプする。

会社支給の退屈な黒色のノートパソコンでタイプしている。aaaandbbbと名付ける。エーエーエーアンドビービービー。リズムがいい。丸の多い見た目が私を楽しませてくれた。

ウィトゲンシュタインの文章がツイッターで流れてきた。「誰も自分自身について間違いなく「俺は糞みたいな奴だ」などと言うことはできない」「なにしろ私がそう言うとしたら、ある意味でそれは正しいのかもしれないが、自分ではその正しさに浸ることができない」。

俺は糞みたいな奴だ。

それはとても整然な物言いで糞みたいでない。

僕は狂っている。

それはとてもスマートな告白で狂っていない。誰かが糞かどうか、狂っているかどうかは少なくとも短文では表せない。短い文節はいつも正しくまっすぐな針のよう。

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私の後ろで同僚が溜息を吐いた。

魂工場で製品が作られるときにゴミがでる。黒い煙や汚水などの捨てるべきゴミが口から廃棄されて空気に消えていく。もしも、溜息に色がついていたらと私は妄想する。軽いそれは冬の息くらいの白だが重く毒素の濃い溜息は痰みたいに黄ばんでくるんだ。

「マスクをしてください」

「他人にうつさないように」

診察室を出た私は長椅子に腰掛けた。目の先に受付があり、女性の事務員の方がカウンターを境に年配の患者へなにかを説明している。できるだけ早く役所で手続きをするように云々。彼女はいくつかの事柄をはっきりと区切って刻んだ。おばあちゃん!役所!手続き!保険!書類!代金!

私も年寄りになったらあんな風に言われるのだろうか。彫刻みたいに言葉を削らないと忘れてしまうのだろうかと嫌になった。

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クラーイ! 最初から辛気くさっ!